チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲の演奏

ダヴィッド・オイストラフ(1959)
CD(SONY SICC-30093)

1.チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
                 ニ長調Op35
2.シベリウス/ヴァイオリン協奏曲ニ短調Op47

  ダヴィッド・オイストラフ(ヴァイオリン
  ユージン・オーマンディ指揮
  フィラデルフィア管弦楽団
  録音 1959年12月24日(1)
      1959年12月21&24日(2)
    フィラデルフィア/ブロードウッド・ホテル

 オイストラフはチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を大変愛した演奏家でした。それだけに録音も多く、若いときから完璧な演奏を聞かせていました。この演奏はオーマンディとの共演で1959年の訪米の時にフィラデルフィアのホテルで録音されていたものです。
 ヴァイオリンの響きはオイストラフ独特の艶のあるもので輝いています。録音もよくホールの響きがオーケストラと共に生々しいです。なんという美しい演奏でしょうか。展開部では完璧なボウイングで乱れもなく感動的な演奏です。カデンツァは力強い演奏で聞き惚れてしまいます。再現部の表現力豊かな演奏も素晴らしいです。第2楽章:カンツォネッタは何とも言えないほどのオイストラフの歌があります。第2主題もまた素晴らしいもので、チャイコフスキーのメロディーの美しさがあります。この作品はこの楽章に大きな魅力があると感じました。第3楽章はヴァイオリン・ソロの見事な演奏と、速いテンポの主部が良い響きで、オーケストラとの対話もまた聴きどころです。後半の熱のこもった演奏には圧倒されそうです。オイストラフの演奏はさすがに素晴らしい。
 シベリウスのヴァイオリン協奏曲もオイストラフの得意な作品で、同じくシベリウスも得意なオーマンディとの共演は注目の演奏です。第1楽章は冒頭から美しい響きのヴァイオリンで緊張感が伝わってきます。ヴァイオリン・ソロは透明感があり、その奥深い響きと雄大なオーケストラの響きが織りなすシベリウスの音楽は壮大です。まさに北欧の音楽です。ヴァイオリン・ソロの重音がよく響きます。オーケストラの勢いのある演奏もまた素晴らしい。オーマンディの指揮が冴えます。カデンツァは緊張感があり力強い演奏になっています。オイストラフのボウイングの凄さがあります。後半の演奏もまた厚い響きで、オーマンディの引き出すシベリウスの響きもいいものです。オイストラフのヴァイオリンも力強く圧倒的な演奏です。第2楽章のアダージョ・ディ・モルトは抒情的なヴァイオリンの主題が歌われて、やがて劇的な響きの中間部があります。ヴァイオリンとオーケストラが力強く響きます。第3楽章は弾むようなオーケストラの響きとヴァイオリンが圧倒的です。オイストラフのヴァイオリンのアタックが凄いです。また重音の響きの素晴らしさは他の演奏を圧倒するでしょう。オイストラフのシベリウスの凄さを感じます。ロジェストヴェンスキー盤と並ぶシベリウスの代表的な名演です。(なお、このCDはBSCD2というカッティングで音質は最新録音のようにきれいです)


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