チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲の演奏

チョン・キョンファ(1978ライヴ)
CD(Belle ame CDSMBA-011)

1.シベリウス/ヴァイオリン協奏曲ニ短調Op47
2.チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
               ニ長調Op35

  チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
  ズデニェク・マーツァル指揮(1)
  シャルル・デュトワ指揮(2)
   フランス国立放送管弦楽団
  録音 1973年5月16日(1)
      1978年10月18日(2)
     シャンゼリゼ劇場ライヴ

 チョン・キョンファは1967年のレーヴェントリット国際コンクールで優勝、1970年にはロンドン・デビューで絶賛を浴びました。この2曲は1970年代の絶頂期ともいえる時期の録音でシャンゼリゼ劇場でのライヴ録音です。
 シベリウスのヴァイオリン協奏曲は冒頭から壮絶ともいえるような気迫に満ちた演奏で、しかも冒頭から力のこもった演奏です。弓の力強いタッチが聞こえてきます。聴いていると背筋が寒くなりそうな強烈な印象を受けます。重音のソロでは気分の高揚、厚みのある響き、凄い演奏が聴かれます。カデンツァは気迫に満ちたもので息がつまりそうな凄い演奏です。チョン・キョンファの絶頂期の演奏は何かが乗り移ったような凄い演奏になりました。第2楽章も冒頭から力強いヴァイオリンが響きます。イメージを一新する演奏です。フランスのオーケストラですがフランスの香りを抑えた素晴らしい響きです。第3楽章は冒頭からヴァイオリンのタッチが力強いです。男性が弾くようなパワフルな演奏が続きます。驚きの演奏です。かつてないシベリウスのヴァイオリン協奏曲の名演といってよいでしょう。
 チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲はデュトワの指揮になります。第1楽章の序奏は静かに始まりますがヴァイオリンのソロが始まるとチョン・キョンファのヴァイオリンが全開になってきます。徐々に盛り上がるヴァイオリンはオーケストラと共に厚い響きになります。展開部では力強いヴァイオリンが聴かれます。カデンツァは美しく力強い響きの演奏です。再現部はこれもパワフルな演奏です。第1楽章が終わると拍手が入ります。第2楽章の「カンツォネッタ」は弱音器を使うヴァイオリンの響きがしっとりとして印象的です。この哀愁的な主題を表現力豊かに歌います。クラリネットとフルートの絡みもきれいです。第3楽章は緊張感のあるソロ・ヴァイオリンが聴きもので、主部の勢いのある演奏は聴く者を引き付けてくれます。木管楽器の響きは派手過ぎずよい響きです。あくまでもヴァイオリンの引き立て役に徹したような演奏です。それにしてもさすがに見事なチャイコフスキーです。シベリウスほど壮絶ではないですが、圧倒的な演奏です。名演奏のライヴには感服しました。


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