その他のヴァイオリン協奏曲の演奏

グラズノフ/ヴァイオリン協奏曲/ユリア・フィッシャー(2004)
CD(PENTATONE PTC5186591)

ロシアのヴァイオリン協奏曲集
1.ハチャトゥリアン/ヴァイオリン協奏曲ニ短調
2.プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲第1番
                 ニ長調Op19
3.グラズノフ/ヴァイオリン協奏曲イ短調Op82

  ユリア・フィッシャー(ヴァイオリン)
  ヤコフ・クライツベルク指揮
   ロシア・ナショナル管弦楽団
    録音 2004年5月

 ミュンヘン生まれのユリア・フィッシャーはヴァイオリンとピアノのそれぞれで国際コンクール優勝の経歴を持ちます。
 ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲ニ短調は1940年の作品。オイストラフに献呈されています。第1楽章はロシアの舞曲のようなリズムで始まります。ヴァイオリンは踊るように主題を演奏します。ロシア民謡風の第2主題が美しいのに癒されます。そして第1主題の再現、哀愁的な中に美しさがあります。カデンツァはハチャトゥリアンの書いたものによります。重音を使う長大なものです。再現部は長くロシア・バレエ作品を聴いているかのようです。第2楽章はアンダンテ・ソステヌート、ファゴットのうめくような主題に始まり、やがてファゴットに誘われるようにヴァイオリンの哀愁的な主題が歌われます。オーケストラも穏やかな楽章ですがコーダで盛り上がってきます。第3楽章はアレグロ・ヴィヴァーチェ、ここでもリズミカルな主題がヴァイオリンで演奏されます。中間部ではロシア民謡風の美しい主題が歌われます。そして第1楽章の冒頭のリズムがちょっと出てから力強く終わります。
 プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番は1916〜17年の作品。第1楽章はアンダンティーノに始まり、アンダンテ・アッサイになる穏やかなテンポの楽章です。ヴァイオリンは力強く、そして美しい響きで主題を歌います。後半になると細かいフレーズが演奏されてきます。第2楽章のスケルツォは後年のハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲に影響を与えたかと思えるほどよく似たリズムが出てきます。しかしながらこのヴァイオリンは斬新な歌い方が実に素晴らしいものです。第3楽章はモデラート、穏やかに始まります。ヴァイオリンの美しい主題と、オーケストラの特徴的なフレーズが印象的です。
 グラズノフのヴァイオリン協奏曲は1905年の作品。ロシア革命の年に書かれていました。第1楽章はモデラート、冒頭からヴァイオリンのソロが入ります。その哀愁的な主題はロシア音楽の神髄ともいえそうです。切れ目なく続く第2楽章はアンダンテ、ヴァイオリンの美しい主題が歌われます。ハープが効果的に使われています。オーケストラの間奏がまた美しい響きです。カデンツァが入ります。グラズノフの書いたカデンツァを豊かな表現力で演奏しています。切れ目なく続く第3楽章はアレグロ、親しみやすい主題が流れます。ヴァイオリンの流麗な演奏、オーケストラの響きも素晴らしい。ピツィカートがよく響きます。これは素晴らしいアルバムです。


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