「春の祭典」の演奏

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(1955)
CD(SONY 88765454312)

ストラヴィンスキー/バレエ音楽集
1.バレエ音楽「春の祭典」
2.バレエ組曲「ペトルーシュカ」
3.バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)

  ユージン・オーマンディ指揮
   フィラデルフィア管弦楽団
  録音 1955年4月24日&5月14日(1)
      1954年11月7日(2)
      1953年3月1日(3)
       (以上モノラル録音)

  オーマンディが最初に録音したストラヴィンスキーの三大バレエ音楽です。「春の祭典」は唯一の録音で幻の録音の初CD化です。「ペトルーシュカ」は組曲で2度の録音の中の最初の録音。「火の鳥」は3度の録音の中の最初の録音。
 「春の祭典」は冒頭のファゴットのうまさと木管の素晴らしい響き、「春のきざし」の弦楽の凄まじい緊張感に圧倒されます。「若者たちの踊り」もテンポが速くその勢いは凄いです。「誘拐」も同様でホルンの響きも素晴らしく、これほどの凄い演奏があったとは驚きです。「春のロンド」では打楽器の迫力も素晴らしい。金管の雄叫びにも圧倒されそうです。「敵対する町の遊び」のスピード感も素晴らしい。「大地の踊り」はその迫力にはモノラル録音ということを忘れて胸が高鳴ります。第2部の序奏は速めのテンポですすみます。メイソン・ジョーンズのホルン・ソロにはしばし癒されます。「いけにえの賛美」の前の和音からテンポは速く「いけにえの賛美」の圧倒的な演奏は乱れもなく凄いです。「祖先の呼び出し」もパーカッションのクレッシェンドは素晴らしい。「祖先の儀式」でのホルンの強奏、まるでお祭りのようなパーカッションはまさに「祭典」そのものです。「いけにえの踊り」の圧倒的な響きは驚きで、このテンポでまとめたオーマンディとフィラデルフィアには脱帽です。最後はピカドンの2つで締めています。演奏時間29分40秒のスピードは記録的です。
 「ペトルーシュカ」はステレオ録音もありますが、この録音も恐ろしいほど緻密でまとまった響きとバランスの良い演奏に驚きです。またパーカッションの響きも新鮮です。この組曲は第3場の「ムーア人の部屋」から「ムーア人のワルツ」をカット、第4場も「仮面」で終わっています。それでもこの演奏はその後のたくさんの演奏のお手本になる超名演といってよいでしょう。
 「火の鳥」は1919年版の組曲です。序奏の弦楽のコルレーニョは実に素晴らしい響きを出しています。「火の鳥も踊り」は目まぐるしく動きます。「王女たちのロンド」は大変美しい響きでうっとりします。「カスチェイ王の踊り」ではスピード感だけでなくチューブラー・ベルの音がよく響く凄い演奏になっています。「子守唄」のファゴットの響きもよく、「フィナーレ」のホルン・ソロはメイソン・ジョーンズと思われますが60年過ぎての復活は喜ばしいことです。3曲ともモノラルですが、たくさんの録音がある現代においてもこの録音は他を圧倒します。「春の祭典」のスピードには脱帽です。


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