ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲の演奏

ヤッシャ・ハイフェッツ(1934)
CD(membran 222137−444)4枚組

ハイフェッツ/ヴァイオリン名曲集
CD1
1.バッハ/無伴奏ヴァイオリンのための
   パルティータ第2番ニ短調BWV1004
2.ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op61
   (カデンツァ:アウアー&ハイフェッツ)
  ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)
  サー・ジョン・バルビローリ指揮
   ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
   録音 1935〜37年(1)
       1934年(2)
CD2
1.ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調Op100
2.シューベルト/ピアノ三重奏曲第1番変ロ長調D898
 ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)
 エマニュエル・ベイ(ピアノ)(1)
 アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)(2)
 エマヌエル・フォイアマン(チェロ)(2)
   録音 1935年(1)
       1941年(2)
CD3
1.チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op35
2.グラズノフ/ヴァイオリン協奏曲イ短調Op82
  ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)
  サー・ジョン・バルビローリ指揮
   ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
   録音 1937年3月25日(1)
       1934年(2)
CD4
1.メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲ホ短調Op64
2.ブラームス/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op77
     (カデンツァ:アウアー&ハイフェッツ)
  ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)
  サー・トマス・ビーチャム指揮
   ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(1)
  セルゲイ・クーセヴィツキー指揮 
   ボストン交響楽団(2)
  録音 1949年(1)
      1939年4月11日(2)

 このアルバムはハイフェッツ円熟期に録音したヴァイオリン作品の名曲集です。
CD1
 バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番は無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータの中でも有名な作品で、5曲目が有名な「シャコンヌ」です。単独でもよく演奏されます。ハイフェッツの研ぎ澄まされたヴァイオリンによる演奏は絶品です。
 ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲はバルビローリとの共演です。第1楽章は序奏から重厚な響きを出していますが、SP録音らしい響きです。ハイフェッツのヴァイオリンが始まるとオーケストラは安定した響きで見事な演奏です。ハイフェッツは展開部から再現部のまで素晴らしい演奏です。カデンツァはレオポルド・アウアーのものをハイフェッツが編曲して演奏しています。これも見事な演奏です。第2楽章はラルゲット、ホルンに続いてヴァイオリンのソロが入ります。中間部の重厚な響きは良い演奏です。ヴァイオリンは良い響きで録音されています。コーダのカデンツァも素晴らしい演奏です。第3楽章の軽快なヴァイオリンと重厚なオーケストラの響きは凄いです。展開部もきれいな演奏でファゴットの響きは弱いですが、よく聞こえます。展開部ではオーケストラが大きく響きます。カデンツァはこちらも素晴らしい演奏です。この演奏は名演です。
CD2
 ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第2番はエマニュエル・ベイとのデュオです。作品は3つの楽章で構成されています。第1楽章の親しみやすい、美しい主題はこの作品を聴く喜びです。第2楽章はアンダンテからヴィヴァーチェになります。第3楽章はアレグレット・グラチオーソでハイフェッツの艶やかなヴァイオリンが奏でられます。
 シューベルトのピアノ三重奏曲第1番変ロ長調はアルトゥール・ルービンシュタインのピアノ、エマヌエル・フォイアマンのチェロにハイフェッツという黄金のトリオによる演奏です。4つの楽章で構成されています。第1楽章のアレグロ・モデラートは華やかな響きの主題に始まります。フォイアマンのチェロが聴ける喜びもあります。第2楽章のアンダンテはチェロに始まり、ヴァイオリンと語り合うように歌います。ルービンシュタインのピアノもきれいです。第3楽章のスケルツォは楽しそうに歌います。第4楽章のロンドはアレグロ・ヴィヴァーチェです。トリオの豪快な響きを楽しむことができます。
CD3
 チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲はバルビローリとの共演です。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は繊細なヴァイオリンが印象的な演奏です。この演奏は提示部最後にアドリブの入るアウアー版を使っているようです。カデンツァも若干のアドリブが入ります。ピツィカートもありません。このカデンツァは見事な演奏です。再現部も緊張感のあるハイフェッツらしい演奏です。第2楽章は弱音器を付けたソロ・ヴァイオリンのしっとりとした響きが美しい。第2主題の響きも素晴らしいものです。弦楽も弱音器を付けていますので穏やかな響きになります。第3楽章は素晴らしいテクニックを見せてくれます。オーケストラとの絡みもよくこの協奏曲を聴く醍醐味があります。さすがに素晴らしい演奏です。 
 グラズノフのヴァイオリン協奏曲もバルビローリとの共演です。第1楽章はモデラート、冒頭からヴァイオリンのソロが入ります。その哀愁的な主題はロシア音楽の神髄ともいえそうです。切れ目なく続く第2楽章はアンダンテ、ヴァイオリンの美しい主題が歌われます。ハープが効果的に使われています。オーケストラの間奏がまた美しい響きです。そしてカデンツァが入ります。グラズノフの書いたカデンツァを豊かな表現力で演奏しています。切れ目なく続く第3楽章はアレグロ、親しみやすい主題が流れます。ヴァイオリンの流麗な演奏、オーケストラの響きも素晴らしいです。弦のピツィカートがよく響きます。名演です。
CD4  
 メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲はビーチャムとの共演です。第1楽章のさわやかなヴァイオリンに始まるこの協奏曲はきれいな作品です。ハイフェッツの演奏には緊張感があります。展開部の厚い響き、そしてカデンツァは見事な演奏です。第2楽章のヴァイオリンとオーケストラの調和のとれた響きは中間部も見事なものです。第3楽章の冒頭では管楽器とヴァイオリンが主題を演奏するところはきれいです。速いテンポで見事な演奏です。この楽章もオーケストラの響きがいいです。素晴らしい演奏です。
 ブラームスのヴァイオリン協奏曲はクーセヴィツキーとの共演です。こちらもSPレコードで有名な演奏でした。録音は古いですが大変きれいです。第1楽章はクーセヴィツキーの指揮がハイフェッツのヴァイオリンを引き立たせるものでオーケストラをコントロールして協奏曲を作り上げています。オーケストラの響きは素晴らしいです。ハイフェッツのヴァイオリンはレガートがきれいで実に素晴らしい演奏です。カデンツァはレオポルド・アウアーのものをハイフェッツが編曲して演奏しています。見事な演奏です。第2楽章はオーボエの美しい響きやホルンの響きと共にヴァイオリンの美しい響きが聞き物です。第3楽章はハイフェッツの緊張感のある演奏が光ります。クーセヴィツキーが良いサポートをしています。復刻状態も良いと思います。


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