ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲の演奏

ヘルマン・クレバース(1974)
CD(DECCA PROC-1632/3)

クレバース/ヴァイオリン協奏曲集
CD1
.ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op61
         (カデンツァ:クライスラー)
2.モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第4番
       ニ長調K218(カデンツァ:ヨアヒム)
CD2
3.モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第2番
       ニ長調K211(カデンツァ:ジンマン)
4.ブラームス/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op77
        (カデンツァ:ヨアヒム)

  ヘルマン・クレバース(ヴァイオリン)
  ベルナルト・ハイティンク指揮(1&4)
  デイヴィッド・ジンマン指揮(2&3)
    ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1&4)
    オランダ室内管弦楽団(2&3)
   録音 1974年12月(1)
       1975年5月(2&3)
       1973年9月(4)

 コンセルトヘボウのコンサートマスター、ヘルマン・クレバース(1923〜2018)のヴァイオリン協奏曲集です。
 ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲はしっとりとした味のある演奏です。大変きれいな響きでホールの良さが演奏を引き立ててくれます。第1楽章のファゴットとヴァイオリンの絡みなどは素晴らしいものです。オーケストラの響きの良さも素晴らしい。クライスラーのカデンツァは厚みのあるヴァイオリンが素晴らしい響きです。第2楽章では美しいヴァイオリンが歌い、ファゴットがきれいな響きで応答します。結尾の表現力もすばらしくカデンツァもよくできています。第3楽章は生き生きとしたヴァイオリンがロンドの主題を奏でます。クレバース51歳の円熟期の演奏はさすがに良い響きを出します。オーケストラもまた良い響きを出しています。ファゴットのソロもきれいです。カデンツァは重音の響きも厚く良い演奏です。ハイティンクのサポートも見事です。
 モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調はジンマンとの共演です。第1楽章のアレグロは勢いのある序奏と明るい響きのヴァイオリンが美しい主題を奏でています。モーツァルトの音楽の明るさは何とも言えません。カデンツァが長大で見事な演奏です。第2楽章はアンダンテ・カンタービレ、愛らしい主題が表現力豊かに奏でられます。カデンツァが入ります。第3楽章はロンド、軽快な主題が歌われます。小編成のオーケストラがヴァイオリンを引き立ててくれます。
 モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第2番ニ長調は第1楽章:アレグロ・モデラートはさわやかなイメージの主題をヴァイオリンが歌います。19歳で作曲した5曲のヴァイオリン協奏曲ですが第2番はザルツブルクで作曲されています。派手さはありませんので演奏機会が少ないようです。第2楽章:アンダンテはロマンスのような楽章です。第3楽章:ロンドは軽やかな主題が歌われます。短いカデンツァが3度入ります。
 ブラームスのヴァイオリン協奏曲ニ長調はハイティンクとの共演、クレバースが1943年に初めてメンゲルベルク/コンセルトヘボウと共演したのもこのブラームスの協奏曲でした。クレバースの演奏は堂々とした大きな音楽を作りだしています。第1楽章展開部の美しさも素晴らしい。ホルンが良い響きです。カデンツァはヨアヒムのものです。丁寧で情熱的な演奏は素晴らしいものです。力強さもあります。第2楽章:アダージョはオーボエの美しい主題、そしてヴァイオリンのソロとホルンの絡みが大変印象的です。ヴァイオリンの艶のある響きは何とも言えません。第3楽章は力強く主題を歌います。鮮やかなボーイングが素晴らしい。ハイティンクと共に作り出すブラームスの響きは重厚で素晴らしい演奏です。


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