チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲の演奏

五嶋 みどり(1995)
CD(SONY SRCR−2259)

1.チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
                ニ長調Op35
2.ショスタコーヴィチ/ヴァイオリン協奏曲
             第1番イ短調Op99

  五嶋みどり(ヴァイオリン)
  クラウディオ・アバド指揮
    ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
  録音1995年3月7〜11日ライヴ(1)
     1997年12月5〜8日ライヴ(2)

 五嶋みどりは1986年のタングルウッド音楽祭でバーンスタインのセレナードを12歳の時に演奏、しかも指揮はバーンスタインでしたがヴァイオリンのE線が1度ならず2度も切れるハプニングがあって、それでもコンマスと副コンマスのヴァイオリンを借りて弾ききったという伝説的な逸話があります。
 チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は23歳の時の演奏ですが、すでにヴァイオリンの大家として有名になっており、ベルリン・フィルの定期に招かれたときのライヴです。ゆったりとした落ち着いた演奏で透明感のあるヴァイオリン、バックのベルリン・フィルの管楽器の響きのよさと非の打ち所のない演奏です。演奏を聴いているとバックの管楽器の音が浮きあがってきて贅沢な演奏会です。木管楽器とホルンの鮮やかな音がベルリン・フィルのならではの響きですが、その中で弾くヴァイオリンは高らかに響いています。カデンツァは力強く大きなホール一杯に鳴り響きます。第2楽章の落ち着いた演奏は余裕を感じさせます。第3楽章は冒頭でレガート気味にはじまり緊張感を漂わせた見事な演奏で、ここではバックのベルリン・フィルの管楽器が合いの手、対話と協奏曲の醍醐味を味合わせてくれます。
 ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番は第1楽章の暗い響きが作曲された1948年という戦後の混乱期を象徴するようです。続く第2楽章:スケルツォはショスタコーヴィチ得意のリズムがあります。しかしながらこの曲の一番の聞きどころは第4楽章:ブルレスカでしょう。ショスタコーヴィチの世界が広がります。これほど鮮やかなリズムの曲はショスタコーヴィチだけのものでしょう。打楽器の鳴らし方は他ではきけません。


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