メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲の演奏

サラ・チャン(1996)
CD(EMI TOCE-14163)

1.メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
                  ホ短調Op64
2.シベリウス/ヴァイオリン協奏曲ニ短調Op47

  サラ・チャン(ヴァイオリン)
  マリス・ヤンソンス指揮
  ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
  録音 1996年11月(1)
      ベルリン/イエス・キリスト教会
      1996年11月6〜8日
      ベルリン・フィルハーモニー・ライヴ

 サラ・チャン(1980〜)はフィラデルフィア生まれの韓国系2世です。6歳からジュリアード音楽院で学んだという逸材。12歳のときにはチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を録音しています。
 メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調は冒頭から感動的な響きの演奏が流れます。ベルリン・フィルとイエス・キリスト教会での録音ですから納得です。サラ・チャン16歳の時の演奏ですが、ヤンソンスのサポートのもと緊張感もさることながらオーケストラに負けることなく若さあふれる演奏を繰り広げています。ヴァイオリンの響きの美しさは実に素晴らしいものです。表現力の豊かさは長年演奏しているかのようです。デンツァは素晴らしい響きです。理想的なカデンツァと言ってもよいでしょう。後半の美しさも素晴らしい。第2楽章も良い響きの演奏です。オーケストラの響きが素晴らしすぎてもったいないほどです。第3楽章は序奏のあとの速いテンポのからの演奏が絶妙です。オーケストラとのバランスの良さ、ヴァイオリンの完璧な演奏、そしてベルリン・フィルの絶品演奏、驚きの名演奏です。
 シベリウスのヴァイオリン協奏曲はフィルハーモニーでのライヴ録音です。序奏から緊張感のある演奏です。クラリネットの響きもすばらしい。主部に入ってからの重音の響かせ方も巧みです。これは素晴らしい演奏です。ヤンソンスの引き出すシベリウスの響きもさすがにいいものです。ハイトーンに始まるカデンツァは気迫に満ちた素晴らしい演奏です。16歳でここまで弾いてしまうとは恐れ入ります。この腕ならばベルリン・フィルもやる気になるでしょう。後半のオーケストラの響きは完璧で迫力も凄いです。コーダのヴァイオリンのうまさとオーケストラの響きの良さは絶品。第2楽章は冒頭のオーケストラの響きの良さはベルリン・フィルならではのものです。ヴァイオリン・ソロは抒情的に歌っています。中間部のオーケストラが厚い響きがなんとも言えません。素晴らしい演奏です。続くヴァイオリンの響きもまた美しい。第3楽章は冒頭から緊張感があり、弾むようなヴァイオリンが流麗で見事な演奏です。オーケストラの間奏が素晴らしい響きです。続くヴァイオリン・ソロは気迫に満ちて、重音の厚い響きが素晴らしい。後半はオーケストラに支えられながら重音を力強く響かせています。オーケストラのティンパニが絶品の表現力をみせてくれます。コーダもまた素晴らしい演奏です。かつて聴いた中でもこれほど凄いと思ったシベリウスの演奏は少ないです。超名演です。


トップへ
戻る
前へ
次へ