ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲の演奏

カリーン・アダム(1992)

CD(camerata 32CM-251)

ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲集
1.ヴァイオリン協奏曲断章ハ長調WoO.5
.ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op61
     (カデンツァ:クライスラー)

  カリーン・アダム(ヴァイオリン)
  アントニー・ヴィット 指揮
  ポーランド国立放送交響楽団
  録音 1992年5月9&10日

 カリーン・アダムはウィーン生まれのヴァイオリニストです。1981年にヨアヒム国際コンクールで優勝しています。楽器は1686年製のガルネリウスを使用しています。
 ヴァイオリン協奏曲断章ハ長調はベートーヴェンが20〜22歳の頃に書いた作品です。この未完の作品をヘルメスベルガーが補筆完成した版で演奏しています。ベートーヴェンらしい響きの作品になっています。アダムのヴァイオリンは流麗で美しい響きが聴かれます。そして長いカデンツァが入って16分あまりの長大な曲になっています。
 ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲ニ長調はアントニー・ヴィットの指揮でオーケストラの響きも良く、ヴァイオリン・ソロが入った時の緊張感が素晴らしいものです。カリーン・アダムのヴァイオリンは厚みのある堂々としたものです。表現力の豊かなこと、この作品に対する思い入れも感じられます。カデンツァはクライスラーのものを弾いています。これは滑らかな素晴らしいカデンツァです。ガルネリウスの響きもまた魅力的です。第2楽章は冒頭の弦楽の響きが見事です。そしてヴァイオリンと2本のホルンとの対話もきれいです。このラルゲットは抒情的なヴァイオリンが聞きものです。また高音でも澄んだ響きが素晴らしい。第3楽章では繊細なヴァイオリンのソロで始まりオーケストラの盛り上がりから重音の魅力的な部分になります。第1主題の回帰からはファゴットがからむ名場面になります。このカリーン・アダムの演奏は90年代の数ある名演奏のひとつと言えます。


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