ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲の演奏

ギドン・クレーメル(1992)
CD(TELDEC 0630-10015-2)

.ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op61
   (カデンツァ:ベートーヴェン&クレーメル)
2.シューマン/ヴァイオリン協奏曲ニ短調

  ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)(1&2)
  ヴァジム・サハロフ(ピアノ)(1:カデンツァ)
  ニコラウス・アーノンクール指揮
   ヨーロッパ室内管弦楽団
  録音 1992年7月14&15日(1)
      1994年7月(2)

 ラトビア出身のクレーメルは探求心が強く楽譜の研究に余念がないようで、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は1975年の録音ではクライスラーのカデンツァ、1980年の録音ではシュニトケのカデンツァを弾いていました。
 この録音ではベートーヴェンのピアノ版のカデンツァを使いながらもピアノとティンパニを入れてその上にヴァイオリンを弾くという大胆なカデンツァになっています。第1楽章はさわやかな序奏に始まります。そして重厚な響きのあとにヴァイオリン・ソロが入ります。クレーメルの演奏は気迫に満ちておりオーケストラも緊張感があります。カデンツァはピアノに始まり、そしてヴァイオリンが流れるようなソロを歌います。中間部にティンパニが入ると大音響になります。長いカデンツァはクレーメルだけのものですが、これは聴きごたえあります。第2楽章のラルゲットはホルンとクラリネットに誘われてヴァイオリンが歌います。この楽章は管楽器とヴァイオリンの対話になんともいえない美しさがあります。第3楽章直前のカデンツァはヴァイオリンのみで重音の厚い響きです。見事な演奏です。第3楽章は力強い演奏が続きます。序奏部分のホルンがきれいに響きます。提示部の後のカデンツァも力強い演奏です。中間部のファゴットもよい響きです。2つ目のカデンツァにはピアノが入ります。まるでヴァイオリン・ソナタみたいですが力強い演奏です。アーノンクールの演奏はベートーヴェンの響きを十分に引き出しています。これは素晴らしい演奏です。
 シューマンのヴァイオリン協奏曲は冒頭アーノンクールの作り出すオーケストラの響きが素晴らしいです。シューマンの音楽に深みを与えています。クレーメルのヴァイオリン・ソロもこの曲に新たな命を与えたような素晴らしい演奏です。3つの楽章を通してよい響きを出しています。シューマンのオーケストレーションはきれいに響かせるのが難しいと言われますが、アーノンクールによって生き生きした音楽になっています。


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