ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番の演奏

ギル・シャハム(1993)
CD-R(Von-Z S-2-265/6)2枚組

Disc1
1.ドビュッシー/交響詩「海」
2.ラヴェル/バレエ音楽「ラ・ヴァルス」
3.ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調Op26
Disc2
4.マーラー/交響曲第1番二長調「巨人」

  ギル・シャハム(ヴァイオリン)(3)
  ロリン・マゼール指揮
   バイエルン放送交響楽団
  録音 1992年3月29ライヴ(1&2)
      1993年7月13日ライヴ(3&4)

 マゼールがバイエルン放送交響楽団を指揮した2つの演奏会ライヴです。
 「海」は第1曲「海の夜明けから真昼まで」では冒頭低弦のきざみ、管楽器の作り出す黎明の雰囲気、そして日の出の上昇フレーズの連続と鮮やかな演奏があります。弦による波の漣ときらめき、管楽器によるうねりなど素晴らしく、この曲は何度聞いても楽しいです。コーダの押し寄せる波は金管の強奏、タムタムとシンバル、ティンパニの強打と圧倒的です。第2曲「波の戯れ」ではハープとグロッケンの鮮やかな響きがありますし、ハープとホルンが作り出す響きも絶妙です。また弦楽による波の戯れの表現がきれいです。第3曲「風と波との対話」では冒頭の低弦の迫力が見事です。ミュートのトランペットがよく響いています。ホルンの吹く風と弦の表現する波との対話が凄いです。波の表現が素晴らしいだけでなくパーカッションの響きがまた凄いです。後半で合いの手パッセージの挿入はありません。コーダは圧倒的で最後にコルネットの三連符が吹かれています。
 ラヴェルの「ラ・ヴァルス」は「ボレロ」と並ぶ人気の作品です。複雑な響きとテンポの変化が演奏の難しさを感じますが、ラヴェルの音楽の響きを知る上には避けて通れない作品です。マゼールの引き出す響きの良さは抜群です。
 ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番を引いているギル・シャハムはイスラエルのヴァイオリニストで、11歳でメータと共演した天才ヴァイオリニストです。この録音は22歳のときのものです。第1楽章冒頭から美音をきかせてくれます。伸びのあるヴァイオリンはこの楽器の魅力を十分に示してくれましょう。重音の響きのよさ、ボウイングの絶妙なこと、すでに巨匠の域に達しているかのようです。第3楽章の流麗な演奏、艶のある響きは素晴らしく、ブルッフの1番では数ある名演のひとつに入るでしょう。
 マーラーはマゼールが交響曲全曲を録音していますが、ライヴも多いです。この1993年のライヴは録音状態がよく、クリアな音質で生々しい音が聞こえてきます。弦の厚み、トランペットの響き、フルートの輝きなど新鮮です。第2楽章の楽しい雰囲気は心が弾むようです。第3楽章冒頭でコントラバスのソロがありますが、続くチューバなど風変わりな楽章で、テンポの変化が面白いです。マゼールは特に間をおいたりテンポを動かしたりして楽しませてくれます。フィナーレは絶叫ともいえる冒頭が悲劇的な響きですが、この作品で最も長い楽章です。各楽器の最もきつい楽章です。しかしながらこの「巨人」の最も印象的なメロディが連続して聞かれるたまらない楽章でもあります。苦悩の時期らしい音楽で穏やかな部分と高揚した部分が交互に現れます。コーダで聞かれるホルンの絶叫ともいえる主題はステージではベルアップしてスタンドプレーになりますが、この感動的なホルンがこの曲の白眉でありましょう。


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