シベリウス/ヴァイオリン協奏曲の演奏

前橋 汀子(1991)
CD(SONY SRCR 8879)

1.シベリウス/ヴァイオリン協奏曲ニ短調Op47
2.ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調Op26

  前橋 汀子(ヴァイオリン)
  オッコ・カム指揮
   ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
   録音 1991年5月19〜22日
  ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール

 前橋汀子の久々のヴァイオリン協奏曲録音はシベリウスとブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番という名曲です。
 シベリウスのヴァイオリン協奏曲は。冒頭からのヴァイオリン・ソロは大変気迫に満ちたものでその美音の中には魂が込められています。重音にも力が入ります。オーケストラの盛り上がりのあとにくるヴァイオリン・ソロとカデンツァは素晴らしい演奏で、このカデンツァは前橋ならではの弾き方でアルペッジョ気味の厚い重音がまたすごいです。かつて聴いた中でも圧巻の演奏です。カムの指揮するオーケストラの響きも素晴らしいものです。ヴァイオリン協奏曲ということを一瞬忘れてしまうほどです。後半の厚みのある響きは見事で、コーダも力強い演奏は緊張感があります。第2楽章はオーケストラに支えられたヴァイオリンが厚い響きで歌っています。このオーケストラの響きが素晴らしいのでヴァイオリンは負けていられません。第3楽章は冒頭の弾むようなヴァイオリンは力強く劇的な演奏です。オーケストラの間奏のあとのヴァイオリン・ソロは厚い響きが凄いです。ここまで厚い響きを出すとは驚きです。後半はカムのサポートに支えられながら重音を力強く響かせています。コーダの叫びもまた素晴らしい。これはまた凄い演奏です。ステレオ録音の代表的な演奏といってよいでしょう。
 ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番は冒頭のヴァイオリン・ソロが美しい響き、主部に入っての艶のあるヴァイオリンが素晴らしい。この演奏はこの作品に輝きを与えるものでカムのサポートもさることながら前橋の音楽性の豊さを感じます。切れ目なく続く第2楽章は哀愁的な主題が流れて、大変よく響くヴァイオリンは特筆ものです。オーケストラも弦楽の響きがきれいです。第3楽章のヴァイオリンは力強いアタックで緊張感あふれる演奏です。前橋の演奏は一味も二味も違います。第2主題の響きの良さも素晴らしいものでこの作品のイメージを一新する演奏です。コーダも抜群の響き。シベリウスと共に超名演といってよいでしょう。


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