その他のヴァイオリン協奏曲の演奏

エルガー/ヴァイオリン協奏曲/ドンスク・カン(1991)
CD(NAXOS 8.553233)

1.シベリウス/ヴァイオリン協奏曲ニ短調Op47
2.エルガー/ヴァイオリン協奏曲ロ短調Op61

  ドンスク・カン(ヴァイオリン
  エードリアン・リーパー指揮
   チェコ・スロバキア放送交響楽団(1)
   ポーランド国立放送交響楽団(2)
  録音 1989年9月18〜21日(1)
      1991年4月13〜16日(2)

 韓国のヴァイオリニスト、ドンスク・カンのシベリウスとエルガーのヴァイオリン協奏曲です。
 シベリウスのヴァイオリン協奏曲は冒頭から緊張感漂う演奏です。ヴァイオリンの響きが大変よく、この作品の素晴らしさが伝わってきます。オーケストラもシベリウスの良い響きを出しています。重音の響き、ヴィオラとの掛け合い、この辺が聴きどころです。ハイトーンで始まるカデンツァは緊張感があり集中力の凄まじさを感じます。パワーがあります。これは素晴らしいカデンツァです。後半も厚みのある見事な響きです。第2楽章はアダージョ・ディ・モルトです。オーケストラに支えられてドンスク・カンのヴァイオリンが美しい主題を奏でます。オーケストラの盛り上がりの後にヴァイオリンが緊張感のある演奏をみせます。第3楽章は冒頭から緊張感があり、ヴァイオリン・ソロが力強く演奏されます。ドンスク・カンのヴァイオリンは勢いがあります。オーケストラと対等にヴァイオリンを弾ききっています。このヴァイオリンは良く響く名器です。これは素晴らしいシベリウスです。
 エルガーのヴァイオリン協奏曲はクライスラーに献呈された作品です。第1楽章:アレグロの冒頭からエルガー独特の響きが流れます。「エニグマ」や「チェロ協奏曲」を彷彿させます。そして弦楽の美しい響きも素晴らしいものです。長い序奏があってヴァイオリン・ソロが抒情的な主題を歌います。間奏のあとにヴァイオリンは伸び伸びと歌います。このエルガーの協奏曲はドンスク・カンのヴァイオリンによく合っていると思います。なんともいえない魅力があります。第2楽章:アンダンテはロマンスを歌うようにヴァイオリンが美しい響きを聞かせてくれます。第3楽章:アレグロ・モルトは細かいフレーズをヴァイオリンが演奏してオーケストラとの掛け合いがあります。この厚い響きはエルガーらしいです。この長い楽章は第1楽章以上で起伏に富んだ作品でなければ疲れそうですが、このドンスク・カンの演奏で聴くと名曲ということがよくわかります。後半もカデンツァは艶のある響きが素晴らしい。


トップへ
戻る
前へ
次へ