ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲の演奏

レイチェル・バートン・パイン(2007)
CD(Cedille Records CDR 90000 106)2枚組

CD1
クレメント/ヴァイオリン協奏曲ニ長調(1805)
CD2
ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op61
    (カデンツァ:レイチェル・バートン・パイン)

 レイチェル・バートン・パイン(ヴァイオリン)
 ホセ・セレブリエール指揮
  ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
 録音 2007年11月27&28日

 レイチェル・バートン・パインはアメリカのヴァイオリニストです。ベートーヴェンがヴァイオリン協奏曲を献呈したフランツ・クレメントの作曲したヴァイオリン協奏曲とベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を録音しています。
 フランツ・クレメント(1780〜1842)はアン・デア・ウィーン劇場のコンサートマスターでした。ヴァイオリン協奏曲はベートーヴェンにヴァイオリン協奏曲を委嘱する前年に書かれました。40分を超える大作です。第1楽章はアレグロ・マエストーソ、モーツァルト風の響きのオーケストラとヴァイオリンのソロがさわやかです。クレメントはたびたびモーツァルトを演奏したでしょうから、響きが似てくるのもうなずけます。そしてティンパニが入るとベートーヴェンのような響きになります。カデンツァjはレイチェル・バートンのオリジナルです。大変美しい演奏です。第2楽章はアダージョ、メンデルゾーンのヴァイオリン協奏曲に似たような主題が歌われます。大変美しいものでオーケストラもきれいな響きです。第3楽章はロンド、アレグロで演奏するヴァイオリンは軽快で希望に満ちたものです。オーケストラの響きはベートーヴェンのようで厚いです。コミュニケーションの楽章にもカデンツァが入ります。レイチェルのヴァイオリンは素晴らしい演奏で、これはよい作品です。録音が少ないのがもったいないです。
 ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は序奏の響きが重厚で素晴らしいものです。これぞベートーヴェンです。ヴァイオリンのソロが始まるとレイチェル・バートンのヴァイオリンは美しく、そして力強く歌います。オーケストラの響きも素晴らしく、ヴァイオリンとのバランスも良く、理想的な演奏です。展開部においてはファゴットとの対話も良い響きで、経過部のオーケストラの響きは厚いです。再現部も素晴らしい響きです。カデンツァはレイチェル・バートン自身のものです。大変よくできたカデンツァです。ヨアヒムやクライスラーのカデンツァにない主題のヴァリエーションが新鮮さを感じさせるものでガルネリウスを充分に鳴らし切った素晴らしい演奏です。 第2楽章のラルゲットはホルンとクラリネットとともにヴァイオリンのソロが始まります。管楽器の美しさとヴァイオリンの美しい演奏が流れます。何とも言えない良い演奏です。経過部のオーケストラも素晴らしい響きです。後半の弦楽のピツィカートとともに歌うヴァイオリンのソロもきれいです。結尾のカデンツァもオリジナルの見事なものです。第3楽章のロンドは軽快なテンポでヴァイオリン・ソロが始まります。管楽器との対話は良い響きです。ファゴットも大変きれいです。カデンツァはレイチェルのオリジナルでこれも大変素晴らしい演奏です。レイチェル・バートンの演奏はセレブリエールのサポートと相まって壮大な素晴らしい名演奏になりました。絶賛したいと思います。


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