「春の祭典」の演奏(ピアノ版)

ラルフ・ファン・ラート(2016)

CD(NAXOS 8.573576)

1.ドビュッシー/交響詩「海」(ガルバン編)
2.ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」
    (1台のピアノ版:レイチキス編)

  ラルフ・ファン・ラート(ピアノ)
  録音 2016年8月16〜18日

 ラルフ・ファン・ラートのピアノ独奏によるドビュッシーの「海」とストラヴィンスキーの「春の祭典」です。
 ドビュッシーは2台のピアノのための作品を書いていましたが、この「海」はルシアン・ガルバンが1938年にピアノ独奏のために編曲したものです。第1曲「海の夜明けから真昼まで」はピアノ独奏の響きの良さがあって、オーケストラの響きも浮かんできます。第2曲「波の戯れ」はピアノ独奏でもよい雰囲気が聴かれます。見事な演奏です。第3曲「風と海との対話」は大変よく響いています。これはもう十分楽しめる演奏です。中間部の雰囲気の良さは申し分ありません。オーケストラのソロ楽器が思い浮かびます。なお、この編曲ではソロですから後半の合いの手のパッセージは入りません。それでも迫力ある見事な「海」の演奏です。

 ストラヴィンスキーの「春の祭典」は作曲者オリジナルの2台のピアノ版はよく演奏されますが、レイチキス編曲による1台のピアノ版はサム・ラフリング編曲に次ぐものと思われます。ピアノ独奏のための「春の祭典」は広がりのある序奏が素晴らしい響きです。奥深さを感じます。それにしてもピアノ独奏でここまで表現できるとは驚きです。「春のきざし」は勢いのある演奏で思わず耳を傾けてしまいます。凄いです。「誘拐」では圧倒的な音量と凄い技で進みます。「春のロンド」は穏やかな部分と大音量の部分の差が聞き所です。「敵対する町の遊び」は音の洪水になっていて、とても緊張感があります。「大地の踊り」はピアノの大音響が素晴らしい。
 第2部の「序奏」から「乙女の神秘的な踊り」はピアノによる主題が美しい響きになっています。「いけにえの賛美」は勢いに乗った大変素晴らしい演奏です。「祖先の呼び出し」は低音のクレッシェンドする響きは迫力あります。「祖先の儀式」ではピアノのリズムの良さ、クライマックスの盛り上がりは素晴らしい。「いけにえの踊り」はピアノの厚みのある演奏に圧倒されます。最後の一打は間をおいて素晴らしい演奏です。ピアノ独奏は難しいと思いますが、これは見事な「春の祭典」です。驚きの名演です。


トップへ
戻る
前へ