ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲の演奏

ヨゼフ・ヴォルフシュタール(1929)
CD(ZYX-MUSIC PD-5021−2)

1.ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
2.    〃   /ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op61
           (カデンツァ:ヨアヒム)
 ヨゼフ・ヴォルフシュタール(ヴァイオリン)(2)
  アルトゥール・ニキシュ指揮(1)
  マンフレート・グルリット指揮(2)
   ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
   録音 1913年11月10日(1)
       1929年(2)

  ニキシュの「運命」はオデオン・シュトライヒ・オーケストラに次ぐ録音でした。
  演奏は第1楽章の冒頭のテーマをしっかり強調してフェルマータもたっぷり伸ばしています。第2主題のポルタメントはこの時代の特徴でしょう。ワインガルトナーと同じです。展開部でも木管や金管がはっきり聞こえますので音の古さは感じません。オーボエのカデンツァがチャーミングです。そのあとの間はたっぷり取っています。ファゴットのファンファーレにはホルンを重ねてしっかりと強調しています。コーダ前のテーマも強調していました。ティンパニはここではっきり聞こえます。
 第2楽章は冒頭の主題がポルタメントをかけた粘っこい演奏が気になりますが、弦のがんばりに脱帽です。そのあとの金管ははっきり聞こえてきます。第2変奏のピツィカートと低弦の演奏は見事です。木管の四重奏はきれいに響いてくれます。第3変奏の木管は8分音符をきれいに伸ばして演奏しています。そのあとのクライマックスでは弦楽器の少なさがはっきりわかります。ヴァイオリンが可愛そうなくらいに響きます。といってもはっきり聞こえますが、まるでソロで演奏してるような音です。低弦のリズムはきちんと響いていました。
 第3楽章は冒頭のリタルダンドのフェルマータを長く伸ばしています。そのあとも同じような伸ばし方で演奏しています。トリオのフーガはさすがにベルリン・フィルで見事な仕上がりです。後半もリタルダンドのフェルマータを長く伸ばしています。ヴァイオリンのピツィカートはきれいです。フィナーレまでの弱奏部分も見事です。フィナーレはさすがに編成の少なさで厚みはありませんが、充分な響きを出しています。ホルンの音もよく響いています。展開部のフルートはきれいでした。第3楽章の回想ではクラリネットのほうがオーボエより目立っています。再現部は冒頭と同じように響きます。ヴァイオリンのポルタメントが若干気になりました。273小節からのドーシラソソソという主題のところで少しテンポを落としていました。コーダに入ってホルンのテーマの前の和音はきれいでした。ピッコロの上昇音が弱いのは仕方のないことでしょう。しかしながらプレストからの見事な演奏はさすがにベルリン・フィルです。
  ヴォルフシュタールのヴァイオリン協奏曲はクライスラーに次ぐ録音で電気録音になってからの音源ですから音はよくなっています。ヴァイオリンの響きもきれいな音で復刻されています。そのテクニックの素晴らしさが伝わってきます。ヨアヒムのカデンツァはよく響いています。十分に鑑賞できる録音です。


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