ブラームス/ヴァイオリン協奏曲の演奏

フリッツ・クライスラー(1936)
CD(Pearl CDS−9362)

1.メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
                    ホ短調Op64
2.ブラームス/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op77
        (カデンツァ:クライスラー)
3.ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op61
        (カデンツァ:クライスラー)
4.パガニーニ/ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調
         〜第1楽章(クライスラー編)  
  フリッツ・クライスラー(ヴァイオリン)
  サー・ランドン・ロナルド指揮(1)
  サー・ジョン・バルビローリ指揮(2&3)   
   ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1〜3)
  ユージン・オーマンディ指揮
    フィラデルフィア管弦楽団(4)
    1935年録音(1)
    1936年録音(2&3)
    1938年録音(4)

 クライスラーは1926〜7年に三大ヴァイオリン協奏曲をレオ・ブレッヒの指揮で録音していました。この録音は2度目になります。録音状態もよく、ポルタメントを多用する戦前の演奏スタイルをたっぷり味わえるアルバムです。SPノイズがありますが演奏は絶品。
 メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は1926年の演奏よりもポルタメントが目立ちます。ロマンティックな演奏ですが隔世の感は否めないでしょう。
 ブラームスのヴァイオリン協奏曲はバルビローリの指揮ですが、指揮者としてはまだ無名のころでした。クライスラーのサポートは見事なものでソロ・ヴァイオリンをささえて伴奏のオーケストラをドライブしています。クライスラーのヴァイオリンはポルタメントを使いながらこの名曲の魅力をしめしてくれます。カデンツァはクライスラーのオリジナルですが、クライスラー本人の演奏はひと味違います。第2楽章のホルンとヴァイオリンの対話もきれいでした。第3楽章はやや遅めのテンポで主題を歌わせています。
  ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は第1楽章のソロの始まりから緊張感漂うものでした。この演奏は蓄音機で聴いたら感動するでしょう。聴くほどに引き込まれてしまいます。バルビローリの指揮がまた素晴らしいものでオーケストラ支えられたクライスラーが思う存分弾いています。展開部におけるヴァイオリンとファゴットの対話もきれいです。クライスラーのカデンツァをクライスラー本人の演奏で聞くのもまた良いものです。第2楽章の最後に入るカデンツァには第3楽章の主題のフレーズを入れた長いものです。他では聴けない珍しいものです。第3楽章ではオーケストラが主題のアウフタクトを強調するところも面白いです。第3楽章のカデンツァは長いですがこのクライスラーのカデンツァは今も愛奏されています。
 パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番は第1楽章だけの演奏というだけでなく、クライスラーがオーケストラをアレンジした珍しい演奏です。長い序奏を短くまとめているだけでなく、ソロに入ってもオーケストラのパートも全く別物ですからこの演奏は新曲を聴いているのと同じです。演奏は素晴らしいの一言につきます。ハープが入るのが魅力です。 


トップへ
戻る
前へ
次へ