ブラームス/ヴァイオリン協奏曲の演奏

諏訪 根自子(1949)
CD(NHKCD KICC−1109)

1.ブラームス/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op77
        (カデンツァ:ヨアヒム)
2.ベートーヴェン/レオノーレ序曲第3番Op72b

  諏訪 根自子(ヴァイオリン)(1)
  上田 仁指揮 東宝交響楽団
   録音 1949年11月28日

 このアルバムはNHKアーカイブで発見された貴重な放送録音です。諏訪根自子は戦前のヨーロッパで活躍した唯一の日本人ヴァイオリニストでした。ドイツでクナッパーツブッシュとブラームスの協奏曲を協演したことがありました。この録音はNHKのラジオ放送の録音でアセテート盤を使っていますので音質はむらがありノイズもありますが演奏の雰囲気は伝わります。
 ブラームスのヴァイオリン協奏曲は諏訪根自子のヴァイオリンがいかに優れたものだったかがわかります。時折ポルタメントを使いながらも艶のあるヴァイオリンが奏でられています。ブラームスの哀愁的な響きまでも出しています。展開部の流麗なヴァイオリン、オーケストラも整然として良い演奏です。途中音が聞こえにくいところがあります。カデンツァはヨアヒムのものですが丁寧に情感込めて演奏しています。諏訪根自子のヴァイオリンの素晴らしさに驚きました。第2楽章はまずオーボエのうまさに驚きました。ヴァイオリンのソロは実に泣かせるものでレガート、ポルタメントが巧みです。ドイツで絶賛されたことがよくわかります。ホルンも良い響きを出しています。第3楽章はやや遅めのテンポで主題を歌っています。オーケストラも良い音を出しています。諏訪根自子のヴァイオリンは抜群のテクニックで勢いのある演奏をしています。まさに伝説的な名演奏です。この録音が残っていたことに感謝です。ノイズや音の貧しい部分はありますがこの演奏は絶賛したいです。
 ベートーヴェンのレオノーレ序曲第3番は上田仁の指揮が素晴らしいものです。オーケストラが整然とした演奏を聴かせてくれます。トランペットのファンファーレは遠近感をよく出しています。この曲は原盤の保存状態がよかったのかノイズは少ないです。


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