チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲の演奏

ミシェル・オークレール(1963)

CD1(PHILIPS PHCP−3389〜91)
CD2(PHILIPS PHCP−20420)

CD1:ミシェル・オークレールの芸術
1.モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調
2.モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調
  ミシェル・オークレール(ヴァイオリン)
  マルセル・クーロー指揮
   シュトゥットガルト・フィルハーモニー
      1961年12月録音
3.チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲ニ長調
4.メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲ホ短調
  ミシェル・オークレール(ヴァイオリン)
  ロベルト・ワーグナー指揮
      インスブルック交響楽団
     1963年2月17〜20日録音
5.ブラームス/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op77
       (カデンツァ:ヨアヒム)
   ミシェル・オークレール(ヴァイオリン)
   ウィレム・ファン・オッテルロー指揮
          ウィーン交響楽団
      1958年9月30日録音 
CD2
1.チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
                  ニ長調Op35
2.メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
                  ホ短調Op64

  ミシェル・オークレール(ヴァイオリン)
  ロベルト・ワーグナー指揮
    インスブルック交響楽団
   録音 1963年2月17〜20日

 オークレールは1943年19歳でロン=ティボー・コンクール優勝したフランスの女流ヴァイオリニスト、60年代に引退したためレコード録音が少ないのが残念ですが、協奏曲のステレオ録音はこの3枚5曲で代表されます。 中でもブラームスは絶品です。音色の美しさ、優雅さ、艶のある響き、絶妙なボーイング、感動的な演奏です。 
 チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は1960年代らしい序奏でヴァイオリン・ソロが入る直前にテンポを落としていますのでヴァイオリン・ソロが表情豊かに歌いながら始まります。オークレールのヴァイオリンはレガートもさることながら時折ポルタメントを使いますので、とても新鮮な演奏に聞こえます。展開部ではソロの前にカットがあります。ヴァイオリンはさわやかな印象を受けます。カデンツァは素晴らしいものですが、ピツィカートは使いませんでした。再現部は緊張感のある見事な演奏です。第2楽章は弱音器を使いますのでおとなしい響きになります。哀愁的な主題がよけいに寂しげな雰囲気になります。このヴァイオリンの音色はデジタル録音時代では聴かれないものです。コンソルディーノでのヴァイオリンの響きとしては今では聴けない音色です。第3楽章は冒頭のヴァイオリン・ソロが実に素晴らしい。テンポは速くなく響きを大切にして聴く者をうならせるものです。オーケストラとの対話がきれいです。イン・テンポになると勢いのあるヴァイオリン・ソロが素晴らしい。さすがにオークレールです。ポルタメントがきれいです。
 メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は美しく繊細な響きのソロで始まります。この協奏曲はオーケストラと対等に弾きますから力が入ります。オークレールのヴァイオリンはさすがに素晴らしいです。カデンツァは力まずに響きを大切にしています。再現部の管楽器の響きはきれいなものです。ヴァイオリン・ソロの美しさが引き立ちます。第2楽章はアンダンテ、哀愁的な主題がオークレールにかかるとよけいに感動的な歌になります。切れ目なく続く第3楽章はアレグロ・モルト・ヴィヴァーチェからの勢いのある演奏がオーケストラ共々素晴らしい響きです。


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