チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲の演奏

ダヴィッド・オイストラフ(1968)
CD(MELODIYA BVCX−4087)

1. チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
                 ニ長調Op35
2. シベリウス/ヴァイオリン協奏曲
                 ニ短調Op47
3.シベリウス/2つのユーモレスクOp87

  ダヴィッド・オイストラフ(ヴァイオリン)
  ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮
  モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団(1)
  モスクワ放送交響楽団(2&3)
  録音 1968年9月27日ライヴ
      1965年(2&3)

 オイストラフはチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を大変愛した演奏家でした。それだけに録音も多く、若いときから完璧な演奏を聞かせていました。
この演奏はロジェストヴェンスキーとの共演で60歳の還暦、最も円熟したころの演奏と思われます。第1楽章ではその表現力が素晴らしく、歌うところはたっぷりと歌っています。ヴァイオリンの響きはオイストラフ独特の艶のあるもので輝いています。カデンツァは力強いボウイングで聞きほれてしまいます。再現部の勢いのある演奏も凄いです。第2楽章:カンツォネッタは何とも言えないほどオイストラフの歌心があります。ヴァイオリンの響きもまた素晴らしいもので、この作品はこの楽章に大きな魅力があると感じました。第3楽章はヴァイオリン・ソロの見事な演奏と、速いテンポの主部が良い響きで、オーケストラとの対話もまた聴きどころです。後半の熱のこもった演奏には圧倒されそうです。オイストラフの演奏を聞かずしてこの作品は語れないと言っても過言ではないでしょう。
 シベリウスのヴァイオリン協奏曲もオイストラフの得意な作品で、同じくシベリウスも得意なロジェストヴェンスキーとの共演は注目の演奏です。第1楽章は冒頭から緊張感が伝わってきます。ヴァイオリン・ソロは透明感があり、その奥深い響きと雄大なオーケストラの響きが織りなすシベリウスの音楽は壮大です。ヴァイオリン・ソロの重音がよく響きます。オーケストラの勢いのある演奏もまた素晴らしい。カデンツァは緊張感があり力強い演奏になっています。後半の演奏もまた厚い響きで、ロジェストヴェンスキーの引き出すシベリウスの響きもいいものです。オイストラフのヴァイオリンも力強く圧倒的な演奏です。第2楽章のアダージョ・ディ・モルトは劇的な響きの中間部が聴きどころです。ヴァイオリンとオーケストラが力強く響きます。第3楽章は弾むようなヴァイオリンが素晴らしい響きです。オイストラフのヴァイオリンの魅力があります。この重音の響きの素晴らしさは他の演奏を圧倒するでしょう。オイストラフのシベリウスの凄さを感じます。シベリウスの代表的な名演です。
 シベリウスの「2つのユーモレスク」はヴァイオリンとオーケストラのための小品です。随所にシベリウスらしい響きが聞かれます。オイストラフの名演奏できくのも良いものです。


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