チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲の演奏

ヴィクトリア・ムローヴァ(1985)
CD(PHILIPS PHCP-20224)

1.チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
                  ニ長調Op35   
2.シベリウス/ヴァイオリン協奏曲
                  ニ短調Op47
  ヴィクトリア・ムローヴァ(ヴァイオリン)
  小澤 征爾指揮
   ボストン交響楽団
   1985年10月17〜19日録音

 ムローヴァは1980年のシベリウス国際コンクール、1982年のチャイコフスキー国際コンクールで優勝という輝かしい経歴を持つが故郷ロシアを離れて1983年にアメリカに亡命しています。このアルバムはその2つのコンクールのタイトルを録音したデビュー・アルバムでした。
 小澤とのチャイコフスキーは大人の魅力たっぷりのつややかなヴァイオリン、豊かな響きで透明感のある響きを出しています。まるで生演奏を聞いているかのように自然な響きに仕上がっています。カデンツァは力強くホールに響きます。第2楽章:カンツォネッタは弱音器使用の主題がきれいに響いています。そのあとの開放されたヴァイオリンが一層きれいに聞こえてきます。第3楽章冒頭はムローヴァの魂をこめたヴァイオリンが見事です。
 シベリウスの協奏曲は優勝しただけに思い入れがあるでしょう。力強さ、雄大さと美しさを兼ね備えるこの曲を力いっぱい弾ききっています。数あるシベリウスの演奏の中でも輝きを放つ名演でしょう。カデンツァの力強い演奏には圧倒させられます。小澤の名サポートも素晴らしい。シベリウスの作品はオーケストラに命をこめないと生きてきません。第3楽章のソロはこれ以上ない完璧な演奏です。ヴァイオリンの響きも大きく、またオーケストラのティンパニの良い響きがたまりません。


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