「海」の演奏(1)

シャルル・ミュンシュ/シンフォニー・オブ・ジ・エア(1957)
CD(MUSIC&ARTS CD1201)

トスカニーニ追悼コンサート
CD1         
1.ベートーヴェン/交響曲第3番変ホ長調Op55「英雄」
2.ドビュッシー/交響詩「海」
CD2
3.エルガー/エニグマ変奏曲
4.チャイコフスキー/組曲「くるみ割り人形」Op72a
5.ベルリオーズ/序曲「ローマの謝肉祭」Op9
6.ワーグナー/「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲

 ブルーノ・ワルター指揮(1)
 シャルル・ミュンシュ指揮(2)
 ピエール・モントゥー指揮(3)
 指揮者なし(4〜6) 
  シンフォニー・オブ・ジ・エア(1〜6)
  録音 1957年2月3日ライヴ(1〜3)(モノラル)
      1954年9月21日(4〜6)(ステレオ)
 
 1957年1月16日に亡くなったトスカニーニの追悼コンサートライヴの全曲です。ワルターの「英雄」だけはワルター協会から
ライヴ録音としてLPが発売されていました。ミュンシュの「海」は初音源と思われます。
 ワルターの「英雄」はLP時代から名盤として高い評価を得ていました。研ぎ澄まされた演奏は気迫に満ちており、トスカニーニが指揮しているかのようです。第2楽章の「葬送行進曲」は劇的な演奏でティンパニが重い響きを出しています。
 ミュンシュの「海」はボストン交響楽団とスタジオ録音した翌年の演奏です。トスカニーニが得意とした曲ですがミュンシュも同じでした。第1曲「海の夜明けから真昼まで」は冒頭のハープが良い響きで、弦楽のさざなみは抜群の演奏です。これはまさにミュンシュの「海」ですね。途中で若干のテンポアップもみせています。弦のきらめきとティンパニは良い響きです。コーダの大波は迫力があります。第2曲「波の戯れ」は冒頭のグロッケンが絶妙な響きです。管楽器、ハープの響きも素晴らしい。またヴァイオリンの「波の戯れ」が凄いです。第3曲「風と海との対話」では冒頭の弦楽とパーカッションが凄いです。カミナリのような太鼓に圧倒されます。ホルンと弦楽の対話が凄い響きです。中間部でヴァイオリンのフラジオレットがピーンとよく響きます。これは素晴らしい。後半に挿入される「合いの手」はトランペットだけで演奏されています。終結前のコルネットによる連続するフレーズと続く3連符を高らかに演奏するというミュンシュの録音でもとりわけ珍しい演奏です。60年代のライヴよりも完成度が高い名演です。
 エルガーの「エニグマ変奏曲」はトスカニーニの録音があります。モントゥーもロンドン交響楽団と後に録音していました。この演奏は録音が大変よく、ホールの響きがよいため素晴らしい響きになっています。
 チャイコフスキーとベルリオーズ、そしてワーグナーの3曲はトスカニーニが引退した後にオーケストラだけでステレオ録音していた貴重な録音です。いずれもトスカニーニと録音した曲ばかりです。「マイスタージンガー」はコンサートマスターの指示だけでよくまとまっています。


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