ブラームス/ヴァイオリン協奏曲の演奏

ゲルハルト・ヘッツェル(1988)
CD(TOBU RECORDINGS TBRCD0020−2)

1.ブラームス/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op77
         (カデンツァ:ヨアヒム)
2.モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調
               K219「トルコ風」

  ゲルハルト・ヘッツェル(ヴァイオリン)(1&2)
  渡邉 暁雄/東京都交響楽団(1)
  ハインツ・レーグナー/読売日本交響楽団(2)
  録音 1988年3月16日
        東京文化会館ライヴ(1)
      1988年3月14
      サントリーホール・ライヴ(2)

 ウィーン・フィルのコンサート・マスターをつとめたゲルハルト・ヘッツェルのライヴ録音です。ソロの録音がほとんどないのでこのアルバムは貴重です。
 ブラームスのヴァイオリン協奏曲はバックのオーケストラが大変きれいな響きで始まります。ヘッツェルのヴァイオリンは透明で力みのないこれも素晴らしい演奏です。展開部の盛り上がりは大変良い響きです。カデンツァはヨアヒムのもので、大変良い響きで時に哀愁まで感じさせる素晴らしい演奏です。コーダのヴァイオリンとオーケストラの掛け合いは絶品です。第2楽章はオーボエのソロ、そしてビヴラートがかかるヴァイオリンとホルンの対話が大変感動的です。ヘッツェルはこの第2楽章には泣かせるほどのヴァイオリンのすすり泣きがあります。この楽章は本当に美しい楽章です。脱帽です。第3楽章は緊張感のあるヴァイオリンと重厚なオーケストラの響きがこれも素晴らしい演奏。ソロが引き立つ渡邊暁雄の指揮もまた素晴らしいの一言です。
 モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番はブラームスの2日前にサントリーホールで読売日本交響楽団の演奏会で演奏したものです。第1楽章のヘッツェルはウィーンのモーツァルトそのものです。これほど美しいモーツァルトだったとは驚きました。レガートの美しさ、天国的な透明感、このモーツァルトはサントリーホールならではの美しさでしょう。カデンツァがまたよく響きます。第2楽章のアダージョは美の極致です。モーツァルトはなんという美しさでしょうか。ヘッツェルの歌もまた極上の演奏です。この楽章は何度も聴いていたいです。カデンツァの透明感は絶品。第3楽章はロンドでメヌエットのテンポで演奏されます。このヴァイオリンは何とも言えない天国的な美しさです。オーケストラで数多くのモーツァルトを演奏してきたヘッツェルには体にしみついたものがあるのでしょう。レーグナーのモーツァルトもまた見事な響きです。第3楽章のカデンツァも美しい響きです。目からうろこのモーツァルトです。数多くの録音がありますがこの演奏は極上の名演です。絶賛します。


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