「海」の演奏(2)

シャルル・ミュンシュ/パリ管弦楽団(1967)
CD(Altus ALT182) 

1.ドビュッシー/交響詩「海」
2.ベルリオーズ/幻想交響曲Op14

  シャルル・ミュンシュ指揮
     パリ管弦楽団
  録音 1967年11月14日
   パリ・シャンゼリゼ劇場ライヴ

 パリ管弦楽団の創設記念演奏会のライヴ録音です。当日のプログラムはこの2曲とストラヴィンスキーの「レクイエム・カンティクルズ」の3曲でした。
 「海」はまさに熱気あふれる演奏です。第1曲「海の夜明けから真昼まで」はテンポは速く、変化も激しく時にはアッチェルランドをかけてきます。なんという自由奔放な演奏でしょうか。亡くなる1年前に見せた燃焼度の高い演奏です。オーケストラはミュンシュの要求にどんどんついていきます。コーダの押し寄せる波はタムタムの強打、ティンパニの強打で爆発します。第2曲「波の戯れ」はハイテンポで「戯れ」というよりも嵐のようです。波の表現が凄いです。第3曲「風と波との対話」では冒頭の低弦の迫力とパーカッションの響きに圧倒されます。トランペットがよく響いています。ミュンシュの気合の一声が入ります。ホルンの吹く風と弦の表現する波との対話が凄いです。このような嵐のような演奏は聞いたことがありません。後半に挿入されるパッセージはここでは挿入されていませんが、それからのテンポアップが恐ろしいほどです。怒濤のコーダには感動しました。
 ミュンシュは幻想交響曲をボストン交響楽団と2度録音していて名盤として知られています。この演奏の1ヶ月前にスタジオ録音した演奏と比べると同じミュンシュとは思えない演奏です。テンポの変化はここまでやるかのスピードアップがあります。第2楽章「舞踏会」は終結の猛スピードには感服です。第4楽章「断頭台への行進」は凄まじいまでの気迫が感じられます。第5楽章「魔女の饗宴の夢」はこの演奏の白眉ともいえそうな爆発的な演奏の連続です。終結の爆発は背筋が寒くなります。ミュンシュがスタジオ録音では我慢して、その鬱憤を炸裂させた演奏といっても過言ではないでしょう。空前絶後の演奏といえるでしょう。


トップへ
戻る
前へ
次へ