2000年以後の「春の祭典」

チョン・ミュンフン/フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団(2007)
CD(DGG 480 3653)
 
1.ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」
2.ムソルグスキー/組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編) 

 チョン・ミュンフン指揮
 フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団 
   録音2007年3月(1)
      2008年12月(2)
 
 チョン・ミュンフンは2000年からフランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督をつとめています。このアルバムはストラヴィンスキーの代表的な作品とムソルグスキーの「展覧会の絵」というどちらもフランスにゆかりのある曲を録音したものです。
 「春の祭典」はモントゥーの指揮でパリのシャンゼリゼ劇場で初演されたことで有名です。フランスのオーケストラは楽器の響きが違うので興味深いです。序奏のファゴットの明るさとE♭クラリネットのうまさ、フルートの明るさなど吹奏楽王国ならではの違いを感じます。「春のきざし」の管楽器の厚み、打楽器の響き、ホルン・ソロの明るい響きも聴きものです。また弦楽の鋭いタッチには驚きます。「誘拐」ではホルンの強奏の素晴らしいこと、チューバなどの底力、打楽器の息のあった演奏など枚挙にいとまがありません。「春のロンド」の弦楽の厚い響きはバレエのシーンを彷彿させます。また大太鼓とタムタムの豪快な響きも素晴らしい。「賢者の行列」も圧倒的、「大地の踊り」はまさに大音響で、聴く者を圧倒します。
 第2部は「神秘な集い」でホルン・ソロが犬の遠吠えのように響きますが、この音色がなんともいえません。「いけにえの賛美」では直前の和音をやや遅いテンポで演奏して速いテンポになります。パーカッションと管楽器の交錯が聴きものです。「祖先の呼び出し」は打楽器のクレッシェンドが素晴らしい。「祖先の儀式」ではコールアングレの響きとミュート付トランペットの主題が印象的、またホルンの強奏もさすがに見事です。「いけにえの踊り」はティンパニの強打が凄い。またホルンの絶叫も聴きもの、この踊りの複雑なリズムは快いものです。最後のピカドンも見事でした。
 「展覧会の絵」はラヴェルの編曲で管楽器のソロが多く、フランスではお馴染みの曲でしょう。最初のプロムナードから足取りの良い演奏です。トランペットのソロが素晴らしい。「小人」は打楽器の迫力が凄いです。「古城」はアルトサックスの出番ですがフランスのサキソフォンは明るくここでも明るい響きが聞かれます。「ビドロ」はユーフォニウムの朗々とした響きが大変きれいです。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミーレ」ではたっぷりと歌う弦楽が印象的です。なお、この演奏ではシュミーレのトランペットが後半でラヴェルの編曲とは異なり原曲通りに半音上げずに演奏しています。「リモージュの市場」はホルンが明るいです。最後の「キエフの大門」までミュンフンの演奏は音による絵画をたっぷり楽しませてくれます。


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