「春の祭典」の演奏(ピアノ版)

フィリップ・ムーア&サイモン・クロフォード=フィリップス(2002)
CD(Deux-Elles DXL-1081)

ストラヴィンスキー/ピアノ連弾作品集
 1.バレエ「火の鳥」より
   魔王カスチェイの踊り〜子守歌〜終曲
   (フィリップ・ムーア編曲)
 2.「ペトルーシュカ」よりの3楽章
 3.バレエ「春の祭典」(ピアノ連弾版)

   フィリップ・ムーア(ピアノ)
   サイモン・クロフォード=フィリップス(ピアノ)
   録音2002年6月

  イギリスの若手ピアニストによるアルバムです。ピアノ連弾活動としては1997年のシューベルト国際コンクール優勝、1998年東京国際ピアノデュオコンクールで第2位受賞しています。このアルバムはストラヴィンスキーの三大バレエを収録しています。
  「火の鳥」はピアノ連弾版がありませんのでフィリップ・ムーアが編曲したものです。迫力の「魔王カスチェイの踊りに始まり、きれいな「子守唄」から「フィナーレ」と演奏しています。ピアノ版も感動ものです。
  「ペトルーシュカ」よりの3楽章はピアノ・ソロで演奏されるのが一般的ですが、ストラヴィンスキーはピアノ連弾用にも全曲を編曲しましたので、こちらの演奏は連弾版です。原曲でもピアノが大活躍しますので、ピアノに支えられたソロ楽器のメロディが浮かびます。何度聞いてもよいものです。
  「春の祭典」もストラヴィンスキー自身の編曲によるピアノ連弾版です。1台のピアノでも4つの手があれば複雑なスコアもかなりカバーできるでしょう。二人の息のあった演奏による「序奏」は大変素晴らしく、ピアノならではの響きの美しさがあります。「春のきざし」からのリズムの変化と強烈な和音が聞く者を圧倒します。「誘拐」の厚みのある響き、「春のロンド」における一時の安息ともいえる響きの良さ、そしてクライマックスの深い響きがあります。「敵対する町の遊び」ではアルペッジョの勢いは凄いし、「大地の踊り」のスリリングな演奏は聞き逃せないでしょう。
  第2部の「序奏」はノクターンのように穏やかな響きになりますが、冒頭の激しい動きは驚きです。「若者たちの神秘な集い」ではいよいよデュオの腕が冴えてきます。「いけにえの賛美」では低音から高音までフルに使う見事な演奏です。完璧で乱れの無い素晴らしさがあります。「祖先の呼び出し」は低音が打楽器の音を出しています。二人の腕が冴え渡ります。「祖先の儀式」ではピアノのトレモロが素晴らしく、時間の経つのを忘れます。「神聖な踊り、選ばれし乙女」はピアノ版だけの良さがありますが、メロディの追いかけは連弾ならではのものでしょう。リズムの変化と対話ともいえる流れは音の洪水になってきます。終結のピアノの煌きは絶品です。 


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