ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲の演奏

ヴァネッサ・メイ(1992)
CD(Trittico  TCMA 27103)

1.チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
               ニ長調Op35
2.ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op61
      (カデンツァ:クライスラー)

  ヴァネッサ・メイ(ヴァイオリン)
  キース・バケルス指揮
   ロンドン交響楽団
  録音 1991年10月(1)
      1992年2月(2)

 ヴァネッサ・メイ(1978〜)はシンガポール出身のヴァイオリニストです。5歳からヴァイオリンをはじめ、13歳でこのアルバムを録音しました。ベートーヴェンは最年少録音記録でした。
 チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は13歳とは思えない流麗な演奏で、第1楽章からレガート、ポルタメントを使いながら軽々と演奏しています。展開部も見事なものです。カデンツァはよく楽器を鳴らした完璧なものです。驚きました。再現部もまた見事な演奏です。第2楽章序奏はコンソルディーノで優しい響きのヴァイオリンです。開放してからの響きの明るさがよくわかります。木管楽器の響きの良さがまた素晴らしい。第3楽章は冒頭のソロが軽快で細かいフレーズも見事に弾いています。若さあふれる演奏になっています。
 ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲はキース・バケルスとロンドン交響楽団の作り出す重厚なオーケストラに支えられてやや速めのテンポで演奏しています。しっかりとした演奏で展開部から再現部の余裕ある響きが見事で、時に哀愁を帯びた響きが聴かれます。カデンツァはクライスラーのもので、十分な練習を重ねたと思える見事な演奏です。これは素晴らしい。第2楽章は序奏のホルンとの対話を丁寧に演奏しています。繊細なヴァイオリンです。そしてファゴットとの対話もまたよい響きです。第3楽章は速めのテンポでヴァイオリンとオーケストラの重厚な響きが流れます。提示部のソロは輝くような素晴らしいヴァイオリンです。ファゴットとの絡みも聴きどころです。カデンツァは力まず丁寧に歌い込んだものです。このヴァネッサ・メイのベートーヴェンは大オーケストラに挑んだ少女の演奏として記念すべきものです。


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