ブラームス/ヴァイオリン協奏曲の演奏

和波 孝禧(1992)
CD(I・M・P PCD−1062)

和波 孝禧/ブラームス&シューマン
1.ブラームス/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op77
         (カデンツァ:ヨアヒム)
   23:34/9:16/8:25(計41分15秒)
2.シューマン/ヴァイオリン協奏曲ニ短調

  和波 孝禧(ヴァイオリン)
  アドリアン・リーパー指揮
    ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
    1992年11月録音
     ヘンリー・ウッド・ホール

 和波 孝禧は1945年東京生まれの全盲のヴァイオリニスト。1959年の映画「いつか来た道」に出演して有名になりました。1965年のロン=ティボー国際コンクールで4位、1970年のカール・フレッシュ国際コンクールでは2位に入賞しています。1990年からサイトウキネンのメンバーとしても活躍しています。
 ブラームスの協奏曲はゆったりとしたテンポの第1楽章ではスケールの大きな演奏になっています。弓のアタックが力強く、このブラームスの協奏曲の演奏の中でも突出したものでしょう。ソリストが曲に集中するときに目をつぶることが多いですが、和波は目が見えないだけに、その集中力は並の物ではないでしょう。聴けば聴くほどその音楽の世界に引き込まれてしまいます。強奏においてもますます艶のある音に磨きがかかります。最もボーイングに力の入る展開部でも鮮やかな演奏です。カデンツァはバッハの得意な和波には最も力量の発揮できる部分でしょう。
 第2楽章:アダージョは冒頭管楽器のバランスの良い響きがきれいです。ヴァイオリン・ソロはポルタメントを使いながら美しい響きを出しています。ホルンとの対話もきれいです。第3楽章の冒頭は生き生きした音で見事な演奏、鮮やかなボーイングです。強奏においてもますます力強い音になっています。かつて聴いたなかでも特に印象に残る名演です。
 シューマンの協奏曲はレガートでやわらかなタッチのオーケストラに始まり、その中に瞑想にふけるようなメロディーがヴァイオリンで演奏されます。この曲は表現が大変難しいように思います。その何かを模索するような気分を大変巧みに演奏しています。和波のシューマンは第2、第3楽章と聴けば聴くほど和波ワールドにはまるような気がします。隠れた名演といえましょう。


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