チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲の演奏

アウグスティン・ハーデリッヒ(2016)
CD(London Phil LPO-0094)

1.チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
               ニ長調Op35
2.ラロ/スペイン交響曲ニ短調Op21

  アウグスティン・ハーデリッヒ(ヴァイオリン)
  ヴァシリー・ペトレンコ指揮(1)
  オメール・メイア・ヴェルバー指揮(2)
  ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
  録音 2016年2月24日(1)
      2015年4月17日(2)
  ロイヤル・フェスティバルホール・ライヴ

 アウグスティン・ハーデリッヒはイタリア生まれでドイツ人のヴァイオリニストです。ウト・ウーギ等に師事しています。
 チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲はペトレンコの指揮による演奏です。第1楽章ではハーデリッヒのヴァイオリンは繊細で力みのない演奏です。展開部では表現力豊かに重音のフレーズを弾いています。カデンツァの前のテンポアップは緊張感があります。カデンツァはメリハリをつけた素晴らしい演奏です。再現部は力の入ったヴァイオリンが響きます。オーケストラの響きも素晴らしい。コーダでテンポアップしています。第2楽章の「カンツォネッタ」は弱音器を使うヴァイオリンの響きが繊細で大変きれいに響きます。この哀愁的な主題を表現力豊かに歌っています。また木管との対話が大変きれいです。第3楽章は冒頭のヴァイオリン・ソロが緊張感を持って演奏されます。主部は力強いヴァイオリンとオーケストラの調和のとれた演奏です。中間部でホルンが追いかけるところがきれいです。また木管が歌うところも素晴らしい演奏です。後半はテンポが速めで勢いのある演奏が素晴らしい。コーダの厚い響きは迫力があります。
 ラロのスペイン交響曲はヴェルバーの指揮による演奏です。サラサーテに献呈されたこの作品ではヴァイオリンの表現力が求められるので腕の見せ所です。第1楽章は力強さと繊細な表現が聴きものです。第2楽章はスケルツァンド、軽快な主題が流れます。スペイン風のリズムとヴァイオリンの歌が聴きどころ。第3楽章は間奏曲は特徴的なリズムがあります。このスペイン舞曲風の主題はギターを弾くようにヴァイオリンを奏でる難しさがあると思います。第4楽章はアンダンテ、暗い響きの序奏とヴァイオリンの哀愁的な主題がきれいです。第5楽章のロンドは序奏が同じフレーズの連続で、このフレーズが楽章を通して使われています。そのリズムに乗って歌われるヴァイオリンのスペイン舞曲風の歌がまた素晴らしいものです。良い演奏です。


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