ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲の演奏

堀米 ゆず子(2010)
CD(NHKCD KKC-2123/24)2枚組

CD1
1.シベリウス/ヴァイオリン協奏曲ニ短調Op47
2.ドヴォルザーク/ヴァイオリン協奏曲イ短調Op53
CD2
3.モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第2番
                    ニ長調K211
.ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op61
      (カデンツァ:クライスラー)

  堀米 ゆず子(ヴァイオリン)
  ヘルベルト・ケーゲル指揮(1)
  ヘルベルト・ブロムシュテット指揮(2)
  外山 雄三指揮(3)
  広上 淳一指揮(4)
    NHK交響楽団
  録音 1980年9月20日(1)
      1981年11月13日(2)
       以上NHKホール・ライヴ
      1987年7月14日(3)
      2010年1月20日(4)  
       以上サントリーホール・ライヴ

 堀米ゆず子が1980年のエリザベート国際コンクールで優勝した直後の日本デビューコンサートを含むN響との共演4曲です。
 シベリウスのヴァイオリン協奏曲は冒頭から大変美しい響きの演奏で思い入れが感じられます。緊張感もありN響の演奏もこれがまた素晴らしい。クラリネットの響きの良さ、ケーゲルの指揮にも感動します。次第に高揚してくるとオーケストラの響きも良くヴィオラがよく聞こえます。重音のソロが絶品です。よくヴァイオリンが鳴っています。カデンツァは気迫に満ちたもので次第に厚みのある見事な演奏を奏でてくれます。このカデンツァにはしびれます。再現部はオーケストラと共に良い響きを出しています。(エリザベート国際コンクールで演奏して優勝した曲だけにその感性の豊かさが伝わってきます) 第2楽章は木管楽器の素晴らしい響きの序奏のあとに美しいヴァイオリンが響きます。大変抒情的な演奏です。中間部の盛りあがりはオーケストラの響きに感動でした。後半のヴァイオリンもまた感動的な演奏です。第3楽章は冒頭の弾むようなヴァイオリンが力強く響きます。オーケストラの緊張感も凄いです。間奏のあとのヴァイオリン・ソロは厚い響きで奏でられています。後半はオーケストラに支えられながら重音を響かせていいます。N響の迫力ある演奏は素晴らしい。ケーゲルと堀米ゆず子には脱帽でした。絶賛します。
 ドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲はブロムシュテットの指揮です。序奏のあとのヴァイオリンの響きの良さは驚くほどです。オーケストラの響きも素晴らしいものです。第1楽章の主題の美しさはボヘミア民謡的でドヴォルザークらしい作品です。この作品をここまで響かせてくれると嬉しいものです。切れ目なく続く第2楽章はアダージョ・マ・ノン・トロッポ、抒情的な主題とホルンの響きが素晴らしいです。第3楽章は軽快な主題で親しみやすいです。ブロムシュテットのサポートも素晴らしいものでこれは大変よい演奏です。
 モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第2番は外山雄三との共演です。シンフォニーのような序奏に続くヴァイオリンのソロが美しい作品です。2番は聴く機会が少ないのですが3番〜5番と変わらない美しさがあります。堀米ゆず子の演奏はレガートの巧みさ音楽性の豊かさでこの作品を素晴らしいものにしています。カデンツァも見事な演奏です。第2楽章の美しさ、第3楽章のロンドはセレナードのような楽しい作品です。この作品もモーツァルトの名曲と改めて感じました。
 ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は2010年に広上淳一と共演していました。録音が良く、第1楽章の冒頭から重厚な響きが聴かれます。ヴァイオリン・ソロは繊細な響きで始まり、オーケストラに負けない力強い響きで演奏しています。展開部の哀愁的な響き、ファゴットの響きの良さ、いうことありません。カデンツァはクライスラーのもので厚い響きで演奏しています。第2楽章はラルゲット、美しいヴァイオリンが流れます。第3楽章は軽快なロンドです。オーケストラの重厚な響きがまた素晴らしいものです。ヴァイオリンの流麗な演奏、ファゴットとの対話もきれいです。カデンツァは短いです。カットがあるようですが厚い響きで演奏しています。このベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は重厚で壮大な音楽を作っている広上淳一の指揮も素晴らしいものです。


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